バスルームを考える

 

 

 

Kは最上階のアパートに住みたいと望んでいる。パリの灰色の屋根に生えたキノコのような黄土色の煙突を目に浮かべている。日中見えるそれらの日常的な風景は夜の海に消え失せ、歴史的なモニュメントだけが光輝いて目に入ってくる。そんな光景を風呂に入りながら見られたらと長年考えていた。

 

Kは朝、起きておもむろにコーヒーを飲みにキッチンへと下りて行く。ついでに、トイレに行って用を足す。それからシャワーを浴びる。彼はやっと目が覚めたようだが、浴室でゆっくりする間もなく、着替えて家を後にする。

夜、仕事を終えて帰ってきても日本のようにゆっくりと湯舟に浸るというのは希にしかないことを残念に思っている。しかし、週末は特に用事が無いときには朝からゆっくりと風呂に浸かりながら、湯舟の延長と下がり壁によってできた水平の開口部から左手に見える外の状況を観察している。その水平な開口部からは何軒かのアパートの様子が目に入ってくる。外からは浴室の内部を見る事はできないであろう。Kの視線は正面左手にあるの脇にある垂直窓へと繋がっていく。この開口部からは寝室の横にあるベランダを通して、かなり遠くまで見ることができる。寝室のベランダからも浴室を見ることはかなわない。その開口部は更に寝室と浴室を区切る壁と天井によってできた欄間となって建物を横切る。更に、浴室の天井は壁の手前で止まり、細長い開口部となって浴室に光を導く。小さな開口部しかないにもかかわらず浴室は光で溢れている。

 

 

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